イエスへの素朴な信仰

“人が顔をそむけるほどさげすまれ”。　現代のとある聖書解説者は、この聖句は、十字架につけられた救い主への、イスラエル民族の嫌悪、そして人間の姿をされた神の御子への尊重の欠けたことに関して告げた、と言っていました。　彼は、その聖句をキリストの時代のユダヤ人達だけに限定しました。　しかし、私はムーディが、“聖書は注釈に大いなる公明を与える”と言った言葉を好みます。　いいえ、その聖句は単にイスラエル民族のキリストへの“嫌悪”を示しているだけではありません。　その聖句の初めでそれは明白にされています。　その節は、“彼はさげすまれ”と書いています。　ユダヤ民族だけではなく、一般の“人々から”です！　“人々からのけ者にされ”―ユダヤ民族からだけではありません。　“聖書は注釈に大いなる公明を与える”のです。　

ルターは、“聖書の例え”について語っています。　この偉大は改革者は、私達は聖書の他の箇所における主題に関して、神が何と言っているかを突き止める為に、聖句と聖句を比べる、と言っているのです。　イザヤ書第49章7節は、

“イスラエルを贖う、その聖なる方、主は、人にさげすまれている者、・・・に向かってこう仰せられる” （イザヤ49:7）。

ですから、ここでも私達は、イエスをさげすむ一般の“人”を見出します。　イエスご自身がこのように言っています、

“もし世があなたがたを憎むなら、世はあなたがたよりもわたしを先に憎んだことを知っておきなさい” （ヨハネ15:18）。

この聖句の中で、この世の失われた人々はキリストを憎むか、もしくは、彼らはキリストを退けるか、そして彼について考えないか、と云う事を私達は見出します、

“人が顔をそむけるほどさげすまれ”（イザヤ53:3）。

多くの面で人々はイエスから顔をそむけます。　それらの三つの面をここで挙げます。

I.　最初に、完全に軽蔑してキリストから顔をそむけている人達。

私はウォーンブランド牧師の著作、『キリストゆえの拷問（Tortured for Christ）』を読んでいます。　私は毎年その本を読み通します。　ウォーンブランド牧師は、キリストを嫌悪する共産主義者達からの恐ろしい体験を語ります。　彼はこのように書いています、

     拷問と残虐行為は途絶えなく引き続いた。私が気を失い、または拷問者に告白を強制するにはあまりにも放心状態になりすぎる時、私は監房に戻る。そこで、ほったらかせられ、疲れ切った私は、気を取り戻すために横になり、そうして彼らは再び私に拷問をかける。多くの人達はこの状態で死ぬ。・・・その翌年、幾つかの異なる牢獄で、彼らは私の四つの背推骨と他の幾つかの骨を折った。彼らは私の体の多くの箇所を切り裂いた。彼らは私の身体を焼き、十八カ所に穴を開けた・・・。
     私達は17時間座らされ‐何週間、何か月、何年もの間―このことを聞く、

     共産主義は正しい！
     共産主義は正しい！
     共産主義は正しい！
     キリスト教は愚かである！
     キリスト教は愚かである！
     キリスト教は愚かである！
     諦めよ！
     諦めよ！
     諦めよ！

(Richard Wurmbrand, Th.D., Tortured for Christ, Living Sacrifice Books, 1998 edition, pp. 38, 39).

彼は誇張していませんでした。　私は彼をよく知っています。

共産主義者と他の社会主義者によるキリストへの嫌悪は膨大です。　今日のアメリカにおいても、イエスと彼の信者達に対する社会主義者達からの大規模な批判を、私達は目にします―ホワイトハウスから学校の教室まで。　現在の高官達は、完全に軽蔑してキリストから顔を背けています。　キリストと彼の信者達をけなす人達は、私達のテキストを確かに成就しているのです。　

“人が顔をそむけるほどさげすまれ”（イザヤ53:3）。

II.　二番めに、無関心な態度でキリストの顔を背けている人達。

今朝ここに出席しているあなた方の何人かについて、確かにそれは言い現しています！　クリスチャンを傷つけたり、“キリスト教は愚かである”と叫ぶ事などは、全く考えてもいないでしょう。　私が、共産主義者達がウォーンブランド牧師にしたことを話すとき、あなた方は怖気るでしょう。　あなた方は、“私は決してそんなことはしない！”と言うでしょう。　私はあなた方を信じます。　私はあなた方が、野獣のような共産主義の拷問者のように、イエスを非難するとは全く思いません。　且つ…！且つ…！　あなた方はイエスに対して冷淡で無関心な態度によって、このテキストを成就しているのです。　

“人が顔をそむけるほどさげすまれ”（イザヤ53:3）。

あなた方はこの教会へ来てただ漠然と座っています。　私がイエスについて語る時、あなた方の目はぼうっとしています。　ある人達は目を閉じています。　他の人達は心を閉ざしています。　冷淡で無関心な態度で、あなた方はイエスから顔を背けているのです。

説教者でさえもそんなことが出来る事を知っていましたか？　私がサンフランシスコ市の北方にある南部バプテスト協議会系の神学校にいた時、トム・フレデリックという学生がいました。　彼は私の友人でした。　トムは説教者でした。　しかしある日曜日に、彼の説教が彼自身の心を突き刺しました！　彼は激しく泣き始め、説教を続ける事が出来ませんでした。　彼は説教壇から降り、その前にひざまずきました。　そこで彼は、救い主への彼の愛が欠けている事を懺悔しました。　この光景に驚いた会衆の前で、彼はイエスから顔を背ける事を改めました。　彼は救い主と向かい合い、そこで真のクリスチャンになりました。　彼はとても優しい人となりました。　彼は、毎週木曜日の晩に、私と他の人達と一緒に、祈りのために私の寮の部屋にやって来ました。　また、聖書を非難していた教授達に対する私の抵抗を支援してくれました。　私達がその神学校の学長の家の門前で学長と対面した際、彼も一緒に行きました。　彼らが、“ハイマーズの狂信者”の一人と彼を呼んだにも関わらず、私を支持してくれました。　彼は南部バプテスト協議会派の、救われていなかった説教者から真のクリスチャンへと変わりました。　彼の回心は、彼がイエスに対して冷淡で無関心な態度を止めた時に起こったのです。

トムは数週間前に亡くなりました。　私は彼の奥さんにお悔やみを差し上げました。　それは1970年代にゴールデン・ゲイト・バプテス神学校での、バトル・フォー・ザ・バイブルで私を支援してくれた事に対して、私が感謝を表す事の出来る些細な事でした。　そうしてずいぶん前にトムが、日曜日の朝、自分の説教をしている間に救われた事に関し、彼の心をイエスに開いて下さった神に、私は感謝するのです。　　

ある人が、“ハイマーズ先生、あなたは私がトム・フレデリックの様になってほしいとは思わないでしょう”と言いました。　神に願います！　あなたが彼の半分にでもなってくれたら、私は天のみ使いの前で喜ぶでしょう！　今ここに座っているあなた方若い人達の幾人かは、毎週毎週、考えることもなく、覚醒することもなく、全く変わりません―神があなた方をほんの少しでもトムのようにされたなら、と思います！

ではこのように考えて見て下さい―1971年もしくは72年に、あなた方がゴールデン・ゲイト神学校にいたとしたならば？　もしあなた方が他の教会からそこに来ていたとしたら？　今考えて見なさい？　あなたは私を支援したでしょうか？　それとも“冷淡に”振る舞い、その論争を避けるのでしょうか？　考えてみなさい！

では、もしあなた方が自分に正直であるなら、あなた方の幾人かは、冷淡にそれから遠ざかる事を認めなければならないでしょう。　どうであろうとあなた方は、あなた方は、“ハイマーズの狂信者”の一人であるようにレッテルを張られることなく、その学校から学位を取り、そして卒業して行く事を望むでしょう。　そうではありませんか？　あなた方は突如として今向きを変え、キリストの為に熱意を持つ事は無いでしょう。　そうではありませんか？　考えなさい！　足を引きづりながら相談室へ行ったり来たりしているような人達は、そのようなリベラル主義の神学校で私の側に立つ事は無いと私は確信します。　確かにあなた方は、現在そうであるように、冷淡で無関心な態度を取ったでしょう！　このように言う人達に同意したでしょう、

“人が顔をそむける”（イザヤ53:3）。

III.　最後に、無視する事でキリストから顔を背ける人達。

あなた方は長い間イエスから顔を背けていました。　イエスについてであろうと無かろうと、私が説教している事に耳を傾けません。　私が哲学について話すなら、あなた方は椅子にまっすくに座り直して注意を払って聞くでしょう。　もし私が政治について話すなら、あなた方は全ての私の言葉を聞こうと、身を乗り出すでしょう。　私が聖書の預言について話す時、あなた方は十分注意を払ってその説教を聞きました。　私が何週間か前に天国について少しばかり話した時、あなた方は関心を持って聞き入りました。　なぜなら、それはあなた方にとって新たな主題だったからです。　しかし私が福音に戻った時に、あなた方は退屈そうでした。　私がイエスについて話す時、あなた方は興味を失うのです。　そうではありませんか？

あなた方若者達は、大学で多くの時間をかけ勉強に精を出しています。　あなた方は良い成績を取れるよう、何時間も勉強します。　あなた方は朝早く起き勉強します。　そして夜遅くまで起きて勉強します。　私はあなた方がしている事に満足しています。　なぜなら、今学校で十分に勉強しなければ、あなた方の専門職で上手く成し遂げられないからです。　私はあなた方が一生懸命勉強している事を喜んでいます。　しかし、あなた方は聖書を学ぶ事に、もしくは、毎週日曜日に印刷して手渡しされるこれらの説教を学ぶ為に、一時間以上も遅くまで起きている事は決してありません。　あなた方は一時間早く起き、魂を救う為に死なれたキリストについて学ぼうとも決して考えません。　あなた方を愛し、天国であなた方の為に祈って下さるキリスト以上に、あなた方にとって、この世の全てのものが、もっと重要に思えるのです。　

“人が顔をそむける”（イザヤ53:3）。

私は、イエスから顔を背ける事を止めるようにあなた方にお願いしているのです。　あなた方が、イエスご自身に向く瞬間、彼はあなた方を救われるでしょう。　あなた方は恐らく救われたように“感じ”無いでしょう。　私が救われた時、私は救われたように“感じ”ませんでした。　私は、何か月か経つまで、自分が救われた事に気がつきませんでした。　私が知っているのは、その日、イエスに向き合ったことです！　私は以前にイエスに信頼を寄せていましたが、その日―私が言えることは―イエスがおられたことです！　それは非常に素朴な信仰でしたが、イエスに於いての信仰でした。　非常に、簡単で素朴な信仰だったのです。　しかし、それはイエスでした！

ウォーンブランド牧師は、彼が福音を説教したが為に牢獄に送られ、その際、共産主義者達にキリストの為に拷問にかけられた多くの人々を目にしました。　彼はまた、イエスを信頼した多くの囚人と共産党員の警備員達を目にしました。　ウォーンブランド牧師はこのように言いました、

人が信仰にたどり着くと―無骨な信仰であっても―その信仰は成熟し成長する。　我々は、それが克服される事は確かである、なぜなら、我々はそれを地下組織の教会で何度も何度も目にしたからである。キリストは共産主義者達、そして他の“信仰の敵達”をも愛しておられる。彼はキリストに導かれる事が出来、そして導かれなければならないのである（Wurmbrand, 同著, p. 115）。

十字架上のイエスの脇で十字架につけられて死んだ強盗の一人は、この世を去る数分前に救われました。　彼はほとんど何も知りませんでした。　彼の信仰は、ウォーンブランドの言葉で言うなら、非常に“未熟”なものでした。　しかし彼は、彼の心がイエスに向きを変えた瞬間に救われました。　そして救い主は彼に、“まことに、あなたに告げます。　あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます”（ルカ23:43）と言われました。　今朝ここに、少なくともその強盗がしたようにイエスを信頼する事が出来る人がいるのではないかと私は感じます。　それは非常に単純な“未熟な”信仰かもしれませんが、あなた方がほんのわずかでも、証を自分自身に求めず、ただイエスを信頼するだけで、自己分析などせず、イエスを信頼するならば、イエスはあなた方を救われるでしょう。　素直で、無力で、“未熟な”子供のようなイエスへの信仰―それがあなた方に必要なのです。　自分自身を見つめてはなりません。　どんなフィーリングさえも求めてはなりません。　単にイエスを信頼するだけです。　混乱してはいけません。　自己判断してはいけません。　それを分析をしてはいけません。　ただ、イエスを信頼するだけです。　後は全てイエスご自身が為して下さるのです。　あなた方が眠っている時にも、このイエスへの信仰の種は育つでしょう。　しかしあなた方は、イエスご自身を信頼しなければなりません―ほんのわずかでも、全く単純に、ためらいつつも、単に未熟でもです。　あなた方はそれぐらいはイエスを信頼できるでしょう。　あなた方がイエスに行く事は出来るでしょう、そしてそのことを保証するための自分自身のフィーリングなどを判断せずに、ただ信頼するだけです。　イエスに任せなさい。　そうしてあなた方が夜に寝ている時でも、その信仰の種は、ウォームブランド牧師が語ったように、“成熟し成長する”のです。　イエスへの、非常にか弱い、無骨な、揺らぐような信仰だけが、あなた方に必要なのです。　グリフィス氏が歌った歌をもう一度聞いて下さい。　それは、自分のフィーリングでなく、素直な、原始的な、イエスへの信仰について告げています。

我が魂しいは闇に、我が心は鋼のように
      私は、みることなく、感じることもない
光と生きることのために、
      我は素朴なイエスへの信仰をもつ（直訳）
(“In Jesus” by James Procter, 1913).

もし私達と話がしたいのであれば、あなた方と一緒に祈ります。　私達は、あなた方が真のクリスチャンになることを手助けしたいと思います。　席を立って、集会場の後方へ今歩いて行ってください。　ケイガン先生が、祈りのために静かな部屋へ案内します。　私がその歌をもう一度歌っている間に行きなさい。

恐れが消え、望みが起こる多くのことを
   我は試みたが、無駄であった
しかし、私が必要なことは、
   聖書にあるように、イエスだけである。

我が魂しいは闇に、我が心は鋼のように
   私は、みることなく、感じることもなく
光と生きることのために、
   我は素朴なイエスへの信仰をもつ（直訳）
(“In Jesus” by James Procter, 1913).

チャン先生、招きに応えられた人達のために、祈りを捧げてください。

（説教終了）
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アベル・プルードホーム氏による説教前の聖書の朗読：ルカの福音書第23章39-43節。
ベンジャミン キンケイド グリフィス氏による説教前の独唱：
“In Jesus” (by James Procter, 1913).